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01/07更新版

2025.01.07

  • #レポート

対話を重ねて作り上げた自校の探究カリキュラム――「探究スタートアップラボ」第2回研修レポート


「今日の研修で自信を取り戻せました。ここで議論したことを自校に持ち帰り、研修に参加していない先生も巻き込みながら、もっと総探を推進させていきたいと思っています。」(感想共有の時間で話されていたコメントより)

「総合的な探究の時間(通称:総探)」が必修となって2年。各校の現場からは「生徒の主体性を引き出すことが難しい」、「カリキュラム開発のやり方が分からない」などの意見が寄せられました。
こうした声に応えるべく、認定特定非営利活動法人カタリバ(以下、NPOカタリバ)は総合的な探究の時間のカリキュラム開発に伴走する研修「探究スタートアップラボ」を今年の7月末より始動しました。


年間3回ある対面研修のうち要となる「カリキュラム作成」に関する研修を2024年11月23日(土)、ビジョンセンター田町(東京都港区)にて実施しました。本レポートではカリキュラム作成やカリキュラムを実現するための組織作りなどについて、参加者が対話と議論を重ねた第2回研修の様子を紹介します。

【理想のカリキュラムのために、自校の理想と現状について交わした対話と議論】


第2回研修の事前に行ったオンラインの相談会では、
「環境を整えられておらず、1回目からほとんど進展がない状態です。」
「総探だけではなく、学校全体の意識をどう変えていくかということも考えたいです。」
など、推進に苦悩する声や課題感が寄せられました。


各校ごとに進捗の状況や問題の大きさは違うものの、「カリキュラムを作る」という共通の目標を掲げ、第2回研修を実施しました。
いくつかのワークを経て作り上げたカリキュラムとアクションプラン。それぞれのワークの様子や内容、さらには各校の声を紹介します。


研修の最初、自己紹介をしながら情報交換をしている様子

1.「自校の『ならでは』」を考え、明らかになった学校や生徒のリアルな姿


第2回研修は、「自校の『ならでは』」を考えるワークから始まりました。
その後のワークで一貫性のあるカリキュラムを作るため、「自校の『ならでは』」を探索することで、各校がカリキュラムの「幹」となる部分を見出せるようになることを意図してこのワークを実施しています。

「ならでは」、すなわち各校の独自性を探索するために、
・その学校「ならでは」
・その地域「ならでは」
・資質・能力を育成するために大切にしたい学びの在り方
の3つの視点ごとに考え、浮かんだアイデアを1つずつ付箋に書き込み、話し合いを行いました。




「自校の『ならでは』」を考え、共有し合う時間


付箋には「先生と生徒の距離感が近い」といった関係性について書かれているものや、「自信がない生徒が多い」など実態を捉えたものもありました。
さらに議論を進めると「生徒が地域へ出ることにハードルを感じている」など、探究を進める上で問題となりそうな現状を指摘する声も上がってきました。

2.理想と現実を行き来し、課題の解像度を上げて取り組んだカリキュラム作成



「自校の『ならでは』」を考えるワークを終え、いよいよ研修のメインテーマとなるカリキュラム作成に取りかかります。
作成に際し、研修の進行を務めるNPOカタリバの横山より以下2点のポイントを伝えました。

 

・実現可能性も重要だが、理想の育てたい生徒像、実現したい学びに向けて、まずは「理想のカリキュラム」を作ること
・「自校の探究によって育みたい生徒像」から逆算した入学から卒業に至る3年間のイメージを持つこと

 




カリキュラム作成の様子


カリキュラムのレイアウトを印刷した模造紙が各チームに配られると、早速議論が始まりました。
「『大学進学』は生徒にとって人生の一部に過ぎない。高校の3年間でどのような力を育みたいか0から考えたい」
といった育みたい生徒像の解像度やゴールを問い直す声も聞こえ、さらには、
「自己肯定感が低い生徒や学習に対して苦手意識が強い生徒が多いという現状を踏まえると、まずは『この学校に入学して良かった』と思えるような体験も必要なのではないか」
など実態に即して、内容を見直しているチームもありました。

一方、ぎっしり詰まった行事予定をテーブルに出し、
「余白がない。このままでは教員・生徒のどちらとも理想の探究はできない」
と話すなど、問題や課題について改めて教員同士で認識をそろえている様子も見受けられました。

カリキュラムの方向性がある程度見えてきた段階で3校ごとにグループになって中間発表を行いました。
それぞれの学校から、作成したばかりのカリキュラムを使いながら自校の理想や現状、探究を推進するための課題が発表されました。

 

中間発表の様子


発表を聞いた他校の参加者からは
「理想状態に近い生徒を『3年1組の〇〇』のようにバイネームで挙げることはできるでしょうか。実際にいる生徒の名前を出せるくらい状態がより具体的になっていると良いと思いました。」
「他の授業や課外活動では、生徒はどんな様子でしょうか。学校生活は探究だけをやっているわけではなく、探究以外の活動もカリキュラムへ関連付けられるかもしれないと思い、質問しました。」
など、具体性を深める質問や提案が寄せられました。

また、今回の研修には各グループにカリキュラムのブラッシュアップを行うサポーターも参加しています。
NPOカタリバのスタッフや外部アドバイザーからなる4名のサポーターは、それぞれ探究学習のカリキュラム開発に関わった経験や教育研究に携わっているなどの専門性があり、議論を進めていく過程で論点や課題について整理や助言をするという意図で配置しています。

サポーターは中間発表でもコメントやフィードバックを務め、
「校内の探究発表会をいつ・どのように開いたら良いか分からないからアドバイスが欲しい」
というフィードバックを求める場面で先進校や他校の事例を共有することもありました。

 


サポーターが他地域や先進校の事例を紹介したり、フィードバックをしている様子

3.「このカリキュラムを現場に実装するためには?」現状を踏まえた具体的なアクションプランの作成


研修の最後に、アクションプラン(カリキュラムを実装・実現するための具体的な行動計画)を作成しました。


「『いつまでに・何をしていなければいけないか』から逆算する」というポイントを伝え、作成したばかりのカリキュラムと自校の現状を見比べながら、どうすれば研修に参加していない教員を巻き込み、今日作ったカリキュラムを自校で実現できるか議論しました。

「計画を組んだのは良いが、これを実行するのは大変すぎるのでは?」
と、現状を鑑みて実現性を問い直す意見や、
「今日の研修を共有する時間を作りたい。来週は行事があるから、その翌週なら会議できるのでは。」
と具体的に他の教員を巻き込むアイデアを考えているチームもありました。



各チームで作ったカリキュラムを見せ合い、知見やアイデアを共有している様子

【アドバイザーへのインタビュー】カリキュラム作成において大事なこと


探究スタートアップラボでは島根大学教育センター准教授の中村 怜詞(なかむら さとし)さんに研修プログラムのアドバイザーとしてご参加いただいています。


今回の研修では高校の探究の事例を広くご存じである中村さんにサポーターとしてもご参加いただいており、アドバイザーの視点から研修の様子や今後の展望について話を伺いました。


 ー総合的な探究の時間を推進する現場ではどんな問題が起きていますか。それを踏まえながら、今日の研修ではどんなことを感じたでしょうかー

 

毎年変化するはずの生徒像やありたい学びの姿が前例踏襲になってしまったり、議論をしても上の立場の先生や弁が立つ先生の意見が通ってしまうという問題があります。

今日の研修では、立場に関係なく意見を交わしている様子を見受けられた点が良かったと感じています。
交わした意見を積み上げてカリキュラムなどの形にするためには、議論の軸が定まっている必要があります。
抱えている課題や超えないと行けない壁などを議論の軸として、共通認識を作れていたことに価値があったかのように思われます。

ーカリキュラムを作る上で大事なことはなんだと思いますかー

 

「自校の生徒がどうあってほしいか」という本質的なところを考えるのがカリキュラム作成の1丁目1番地です。
生徒たちの現状を見つめて「どんな学びを通して・どんな力を身につけてほしいか」ということを議論することが大事だと思っています。

 

ー第2回対面研修を終えた教員たちへの期待ー

 

教員間で教育目標や生徒像について具体的に認識を揃えて欲しいと思っています。
例えばカリキュラムで「グローバルリーダーを育てたい」という目標を掲げていても、教員同士で「グローバルリーダーとなるような生徒像」がずれてしまうと、カリキュラムで描いていた目標やそこに至るまでの過程は絵に描いた餅で終わってしまいます。
目指すゴールの解像度を上げることで、達成のために何に取り組めば良いかが明確になっていくと、具体的なカリキュラム設計に取りかかることができると思います。

 




立場に関係なく意見を交わしている様子

 

 

【対話を重ねて作り上げたカリキュラムを、自校の現場に実装】

 

集合写真

 

今回の研修ではカリキュラム作成のための対話と議論を通して、探究だけではなく学校全体や生徒たちの問題や課題についても教員同士で認識がそろう時間となりました。
研修に参加した13校のチームは、それぞれの現場に戻り、作ったカリキュラムをより精緻にしながら、自校の「総合的な探究の時間」に実装していきます。

探究スタートアップラボは、来年の3月29日(土)に最後の対面研修を実施します。
マイプロジェクトアワード全国Summitのプログラムを視聴した後で、今回の研修を受けて各校が実践したことなどを発表し合う予定です。

 

【参加者の声】

 

「『総探を来年度からどう推進するか』という計画を作成しつつ、まずは今回の研修に参加していない教員との目線合わせをしたいと思っています。」

「研修に参加する前は『1年間で探究を行う』という長いスパンで総探の計画を立てていましたが、サポーターからのフィードバックや他校の事例共有を受け、行事間や学期ごとなど、より短いスパンで計画した方が本校の生徒に合っているという気付きがありました。実態に応じてカリキュラムを修正することができて良かったです。」

「カリキュラムは『学年ごと』だけではなく、『入学から卒業までの3ヵ年』という大きな視点で考えることも大切であるということが分かりました。」

「最終的なゴールに向かって、各学年ごとにマイルストーンを置き、『いつまでに・どんな状態になっていると良いか』という理想状態を決めておくと良いという学びがありました。」

 

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【探究スタートアップラボの運営】

主催:全国高校生マイプロジェクト全国事務局実行委員会
助成:一般財団法人三菱みらい育成財団

文:豊平哲平(ライター)

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