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05/08更新版

2025.05.08

  • #レポート

探究を探究する半年間の“学び”の発表会――「探究スタートアップラボ」第3回研修レポート

「総合的な探究の時間」(通称:総探)が高等学校で必修となってから2年。各校が独自のカリキュラム開発や実践に取り組むなか、認定特定非営利活動法人カタリバ(以下、NPOカタリバ)は、探究の立ち上げ期にある学校を対象とした研修プログラム「探究スタートアップラボ」を実施しています。本プログラムでは、教員同士が学び合い、試行錯誤を共有しながら、よりよい探究のあり方を模索してきました。

 

今回レポートする第3回研修は、これまでの学びを持ち寄り、各校のカリキュラム案を発表し合う最終回です。全国各地から選出された高校生(48プロジェクト)が集う「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」との同時開催となり、それぞれの学校・地域の伴走者も合流。交流と学び合いの場となりました。全国の実践とつながりながら、より広い視点での学びと対話が生まれた第3回研修の様子をレポートします。

【つながり、深まり、ひろがる探究——13校の挑戦とこれから】

 

第3回「探究スタートアップラボ」研修は、2025年3月29日、東京大学 国際学術総合研究棟にて開催されました。第1回研修「福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校での先進事例視察と自校の課題分析」、第2回研修「自校の特性を踏まえた探究カリキュラムの検討と作成」を経て、今回は各校が作成したカリキュラムの発表とフィードバックを通じて、今後の実践に向けた課題の共有や解決策の検討を行いました。

 

また、第3回研修は「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」との同時開催。前半のプログラムでは、全国の地域Summitを経て集まった高校生によるプレゼンテーションを観覧し、自校で育てたい「学びのロールモデル」を見つける時間となりました。後半には、半年間の学びと試行錯誤を振り返る「学びの発表会」を実施。それぞれの学校が培ってきたカリキュラムや実践から、次年度に向けたヒントや気づきが数多く共有されました。最後のクロージングでは、特別ゲストの鈴木寛氏(すずかん先生)による全体講評もあり、各校が新たな一歩を踏み出す一日となりました。

 

「探究スタートアップラボ」第3回対面研修 兼 伴走者フォーラム 全体オープニング

1.「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」で見つけた、学びのロールモデル

 

「マイプロジェクト」とは、高校生自身が「実現したいこと/変えたいこと」を主軸に、学校での総合的な探究の時間や学外の機会を活用してプロジェクトを立案し、実際にアクションを通して学んでいく取り組みです。その実践者たちが一堂に会し、互いの学びを共有し合う場が「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」です。

参加校の先生方には、観覧前にNPOカタリバの横山より「自校で生み出したい【学びのロールモデル】とは?」という問いが投げかけられました。ポイントは「再現したい学び」「学びの特徴」「生徒らしさ」。その問いを胸に、先生方は高校生の発表を観覧しました。

 

会場には、自分の想いを言葉にし、楽しそうに、時に真剣なまなざしで語る生徒たちの姿が。大人との対話にも真正面から向き合う様子に、観覧した先生方も強く刺激を受けていました。

 

自校の探究を念頭に「学びのロールモデル」を見つける時間

 

観覧後には、こんな感想が聞かれました。

 

  • グループで取り組む生徒、個人で向き合う生徒、それぞれの学び方に特徴と生徒の変容があると感じました。自校では、グループで協力し合いながら、交流の中から学ぶ経験をもっとデザインしていきたいと思います。
  • ロールモデルになるような生徒の姿が確かにありました。ただ、自校でその姿を引き出すにはどうすれば良いのか…まだ漠然としています。どう働きかければよいか、模索していきたいです。

 

それぞれの先生にとって、「自校の生徒であればどう学ぶだろう」「どうすればこんな学びを生み出せるのか」という問いがリアルに立ち上がってくる時間となりました。これまでの研修を通して学びの解像度が高まってきたからこそ生まれる気づきと葛藤が、現場の探究を一層深めていく原動力になるのかもしれません。

2.半年間の学びと試行錯誤を振り返る「学びの発表会」

 

後半はいよいよ、半年間の成果発表会。参加校の先生方が5つのブースに分かれ、発表とサポーターとの対話を行いました。会場には「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」の引率で来ていた伴走者のみなさんも合流。活気に満ちた雰囲気のなかで発表がスタートしました。

 

それぞれのブースには、探究学習やマイプロジェクトの創世記から、全国各地の高校現場でさまざまな実践を繰り返しているみなさんが、サポーター・ファシリテーターとして参加。発表者に対してのフィードバックはもちろん、今後につながる問いを投げかけていただきました。

 

サポーターの先生方

 

ファシリテーターのみなさん

 

各発表ブースには、サポーターとファシリテーター、観覧の伴走者のみなさんが揃う

 

ここからは、発表を行った2校の具体的な取り組みを紹介します。

 

——–

令和5年、統合により新たに開校したA高校は、普通科と農業・工業の専門学科が一体となった学校です。統合して2年目、3年間を見据えたカリキュラム作りや探究の推進体制を整備するため「探究スタートアップラボ」に参加しました。

 

A高校発表の様子

発表会では、成果のひとつとして【カリキュラムマネジメントのチェックシート】が紹介されました。これは、第1回研修と発表直前の2回にわたって、自校の探究カリキュラムを評価するために活用したものです。A高校の評価のスコアは、2回目の方が低くなったといいます。

 

S先生はこう語ります。

  • 第1回研修のときは「どちらかといえば当てはまる」が多くて、我々も「結構がんばってるな」と思っていたんです。でも再度チェックしてみたら、「どちらかといえば当てはまらない」が増えていて、全体的にスコアが“下がっている”という結果になりました。

 

数字が下がったことを「成果」と語るのはなぜでしょうか。その理由について、S先生はこう続けます。

 

  • 最初は頭の中の理想をもとに評価していたんですよね。でも実際に1年間やってみたら、思っていた以上にずれや課題があった。チェックシートで見える化しなければ、気づけなかったことがたくさんありました。数字が低く出たこと自体が悪いのではなくて、大事なのはそこから何が見えてきたか。私たちにとっては、大きな気づきになりました。

 

生徒へのアンケート結果からは、「探究に対して肯定的に変容している」という成果も得られたそうです。

 

また、コアチームとして研修に参加したM先生からは、次のような声も聞かれました。

  • 統合してまだ間もないという点で、似たような悩みを持つ参加校もあって安心しました。「自分たちだけじゃない」と思えることで、方向性の共通点が見えてきたり「自分たちのやっていることは間違っていない」と思えたりして。先進校の視察も貴重でしたが、この研修は“まだ形になっていない”からこそ、ぶっちゃけた話が聞けるし、トライ&エラーから学びを得られる。私たちにとって、必要な学びでした。

 

課題の可視化、先生同士の対話、他校との共感。研修の時間を通して得られたものが、学校と生徒の変化につながっていることが感じられる発表でした。

 

発表後には、サポーターの酒井淳平先生から、探究カリキュラムの立ち上げに取り組んだ先生方へのねぎらいの言葉と「1年間が終わってホッとしている」という声への深い共感も寄せられました。さらに、「探究にのめり込む生徒」が現れ始めたことを受けて、次年度に向けた新たな工夫の必要性についても問いかけが。今後のカリキュラム設計を考えるうえでのヒントとなるような問いが、丁寧に投げかけられていました。

 

発表後には、各校へ感想がびっしりと書かれた付箋とともに労いの言葉が贈られていた

 

発表後の付箋を眺めながら、サポーター・ファシリテーターと語り合うチームも

 

——–

 

続いて紹介するB高校は、「育てたい生徒像・資質能力が漠然としている」という課題を抱え、「探究スタートアップラボ」への参加を決めました。第2回研修で行った「育成したい資質・能力」を5つに絞るワークショップでも、なかなか明確な答えを見つけきれなかったといいます。

 

B高校発表の様子

 

K先生は、その後の葛藤と気づきをこう語ってくれました。

  • 第2回研修のあともずっと、「育成したい資質・能力」について考えていました。総探の授業やその他の活動の中でうまくいっている場面に共通するのは何か?と振り返る中で、“対話”だと気づいたんです。

 

B高校では、生徒の隣に先生が座り、問いかけに生徒が応え、そのやりとりを先生が丁寧に書き留めるという“対話”を通じた関わりが、多くの場面で学びを深めていることが分かりました。「対話によって言葉を紡ぎ、その言葉を受け取り合いながら他者とつながる」。その姿をB高校らしい学びの在り方として定義し、そこから【育成したい資質・能力】【3か年計画】【ルーブリック】を明確に言語化することができたそうです。

 

K先生は研修全体を振り返って、こう話してくれました。

  • やっぱり“振り返り”が大事だって気づかされた研修でした。生徒の振り返りも大切だけど、先生たちの振り返りも同じくらい重要。みんなで振り返りをする中で「うちのスタイルって対話を大切にしているんだな」と気づけたんです。最後まで「うちの学びって何だろう」と迷っていたんですが、研修に参加して、それを現場に持って帰って、という往還があったからこそ生まれた気づきだなと思っています。

 

さらに、若手のS先生もこんなふうに語ってくれました。

  • 総探では、生徒と話すことくらいしかできていなくて、カリキュラムづくりも正直わからない。研修当初は「ついていきます」という感じだったんですが、研修を重ねるうちにコアチームの先生方と対等に意見交換ができるようになって。自分の実践も受け止めてもらえて、本当の意味で“チーム”になれた気がしました。きっとこの先、私が担う場面も増えると思うので、将来の自分にとっても大きな学びになりました。

 

探究の本質やB高校らしさと向き合い、チームとして成長していく様子が伝わる発表でした。

 

発表後に行われた、梅北瑞輝先生との対話の時間。B高校が課題としてあげていた「育成したい資質・能力」の言語化に至るプロセスや、チームとして探究を推進できるようになった背景・先生方自身の変化について、一つひとつ丁寧に掘り下げていきました。日々当たり前のように行っていた生徒との関わりが、実は大きな気づきや変容を生み出してくれた ―そんなことに改めて光を当てる対話の時間となりました。

 

発表後には和やかな雰囲気で、サポーターとの対話が行われた

3.各校の学びと葛藤を讃えあう「学びの発表会」

 

参加校13校による発表を終え、研修はクライマックスへ。
半年間にわたって試行錯誤を重ね、さまざまな壁や葛藤を乗り越えてきた先生方へ、修了証の授与が行われました。また、サポーター代表・廣瀬志保先生からは先生方に寄り添う、あたたかくも勇気づけられる言葉をいただきました。

 

修了証を受け取る各校の代表者たち

 

続いて特別ゲストの鈴木寛氏(すずかん先生)による全体講評へ。

 

「探究スタートアップラボ」参加の先生方、修了おめでとうございます。


皆さんの発表は知恵の塊。まさに“集合知”がここに集まっていると感じました。企業だったら企業秘密にするところを、教育って、日本中の高校生のためにその知恵を惜しみなく共有できる。これがまたすごくいいんですよ。こうしてできたコミュニティが広がって、進化していけば、探究やマイプロももっと広がっていくはずです。


やっぱり一番大事なのは、現場で日々奮闘している先生たちが集まって、悩みや課題を共有することだと思うんです。現場にはたくさんの知恵があるので、それを持ち寄って、またそれをそれぞれの学校に持ち帰っていく。このループがすごく大事で、今回、その循環が始まったことが何よりの成果なんじゃないかなと思います。


そして何より、みなさんがこの数か月、忙しい日々の中でも試行錯誤を重ねてきたこと、それ自体が素晴らしいし、ちゃんと成果になっていたと思います。ここからまた、新しいアクションが生まれていくことを期待しています。本当にお疲れさまでした。


今日ここで感じた仲間の絆と熱量を、ぜひこれからの現場に持ち帰って、また仲間と励まし合いながら進んでください。私も一緒にがんばります。本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

 

「探究スタートアップラボ」は、半年間にわたり、自校の“探究”を先生自らが探究し続けた挑戦の場でした。たくさんの出会いと学び、そして次のチャレンジが生まれたこのコミュニティは、いよいよ第2章へ。2025年度(第2期)の募集も予定しています。この熱気がさらに広がり、深まっていくことが楽しみです。

 

参加者全員の集合写真

 

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【探究スタートアップラボの運営】

主催:全国高校生マイプロジェクト全国事務局
助成:一般財団法人三菱みらい育成財団

 

文:宮木慧美(ライター/探究コーディネーター)

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