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マイプロジェクト

地域Summit

2018.11.12

【MY PROJECT AWARD】伴走者インタビュー(4)「主体的に生きる人が増えれば、世の中は面白くなる」

全国高校生MY PROJECT AWARD 伴走者インタビュー(4)

斉藤誠太郎さん(一般社団法人ISHINOMAKI2.0)

 

 

Interview|

 

 

◆伴走者として高校生に関わるようになったきっかけ

 

ISHINOMAKI2.0のスタッフとして石巻に来たのが、震災から2年経った2013年だったんですが、そこで地域で何かしたいという高校生と出会ったんです。だけど彼らは、ノウハウもネットワークもお金も場所も、何も持ってない。僕らはちょうど海士町のモデルなどを見てて、若い世代と一緒に協働するというのは大事だなと考えてた時だったので、彼らを応援することにしました。
最初は一緒に何か考えようと言って、高校生と僕らで相談しながらすすめていった結果、高校生一人一人がやりたいことをやる、というマイプロ的アクションを考え、実行する場になりました。そこからコラボ・スクール女川向学館(NPOカタリバが運営する被災地の放課後学校)の方と知り合って、「マイプロジェクト」と言う言葉を知ったんです。

 

 

◆普段はどのような体制で伴走しているのですか?

 

ISHINOMAKI2.0の拠点になっているカフェとコミュニティスペースとオフィスが併設した「IRORI石巻」と言う場所で、月2〜3回ほど「いしのまき学校」という高校生向けの教育プログラムを行なっています。高校生が地域で行動し、地域で学び、地域で成長することで自身の未来に前向きに進めるようになることを目的としたプログラムです。強制参加ではなく、声かけをして集まった高校生が来るような場です。平均して1回あたり7〜8人くらいの参加者が集まって、街の面白い大人を呼んで一緒に話したり、地域に出て活動をしたり、自分の進路を考えたりするのですが、それに加えてマイプロ相談会のようなことも行なっています。そこにスタッフ2〜3人と、チューターとして地域の若い社会人に入ってもらって、高校生のサポートをしたり一緒に学んだりしてます。

 

 

◆マイプロ高校生を見ていて、斉藤さん自身はどんなことを感じられますか?

 

本当に色々なことを感じますね。いつも感じるのは、「こんなことができちゃうんだ!」ということ。できないと思ってたことも、やってみたら意外とできるんだな、と彼らを見ていて思います。
あとは、目の付け所が一人一人違うんだなってことですね。「そこ?」と思うようなことに着目したり。最初は似たようなテーマや課題感を持っていても、突き詰めていくとアクション内容や思いに必ず違いが出てくる。一人一人の可能性を毎回感じます。

 

 

◆今のお話から、パッと思い浮かぶプロジェクトは?

 

子どもが好きで、読み聞かせをやりたいといっていた高校生がいたんです。でも、児童館へのヒアリングの中で「読み聞かせはすぐ飽きる」と言う話を聞いたらしく、その子が考えたのは「飽きさせないための、体験型の読み聞かせ」でした。どんなものかと思ったら、実際に児童館と市民ホール、それらをつなぐ大通りや裏道、全てを使って不思議の国のアリスの世界観を作ってしまったんです。部屋を飾りつけて、小道具を用意して、みんなで登場人物の格好をして、物語に合わせて動きを伴わせる体験型の読み聞かせを行いました。一人ではもちろん大変なので、友達の女子高生2〜30人を巻き込んで、美術班とか演技班とか、色々役割分担して。子どもたちの反応もすごく良かった。最初はちょっと壮大すぎないかと思っていたんですけど、「やろうと思えばできるんだな」と感じたエピソードですね。

 

 

◆個別の高校生で、「この子はマイプロやアワードを通じて変わったな」と思えた印象的なエピソードについて教えてください、

 

ある男子生徒が、最初は受け身で他の高校生のマイプロの手伝いをしてたんです。でもそのうち、周りに触発されて「自分も何かやりたい」と思うようになって、プロジェクトマッピングでゲームを作るというのを自分で企画するようになりました。それをきっかけに「映像を作るのが楽しい」と気づいて…それまでその高校生は工業高校で就職を考えてたんですけど、結果的に芸術大学の映像制作に進みました。そのような形で、マイプロを通じてやったことが進路につながっていく高校生は多いです
あとは、「石巻を地域の人に知ってもらいたい」「若い子に石巻を知って好きになってもらいたい」といって、商店街で食べ歩きを企画した高校生も印象的ですね。「30人に参加してもらう」という目標を自分で立て、最初は自分の友達から始めて企画を10回以上やって、目標を達成していました。自分なりに成果を出したということが自信になったみたいで。大学は地域構想学部系のところに進んで、地域の魅力を発信するのに、自分で仕事を作りたいと意気込んでいます。最初は彼女もやり方がわからなかったので、こちらからサポートしてあげることが多かったんですが、いつのまにか知らない地域の大人に相談するようになったり、自分で考えて自分で動くことができるようになっていきました

 

 

◆そういった内面の変化もそうですし、具体的な進路につながるというのも大事な視点ですね。斉藤さん自身は、高校生がマイプロジェクトを行ったり、その先アワードに参加したりする意義や価値はなんだとお考えですか?

 

これからの地域や、ひいては日本を作るのは次の世代の若い人たちです。マイプロは、そんな彼らに必要な学び方や、成長の仕方のトレーニングになると思います。大人になっていくにつれて、自分で企画したり動かしたりする力って大事になっていく。最初は周辺参加だったとしても、それが何かのきっかけに繋がることもある。
そして、こういった動きは石巻や東北だけじゃなく、全国に必要だと思います。高校生がマイプロをやることが「地域の活性化」に直接効果があるかどうかでいうと、劇的で短期的な効果はないと思います。でも、少しずつでも地域が元気になったり、地元に帰りたいという人が出て来るきっかけにはなる。

 

アワードに関しては、高校生にとって同じレベルで頑張っている高校生を知って、お互いに触発される機会だと思います。石巻の中だけだと、マイプロを行なっている高校生はわずかだし、周りと話が合わないとか、理解を得られなくて苦しんでいる子もいます。そんな中でアワードに出ることは、もっと広い視野で見たらこんな奴らがいるんだっていうことに気づいて、モチベーションが上がる機会にもなっているようです。また、誰かに話すことで仲間づくりができる。自分のことも話し、相手のことも聞いて、その場で話しかけて輪が広がるとか、毎年そういう光景があるなと思ってます。もちろん表彰はありますが、「競い合う」というよりはお互いを知るいい機会だと思います。

 

 

◆アワードで、高校生が自分のプロジェクトをアウトプットすることを通じての変化を感じることはありますか?

 

話すと自信がつくんですよね。なかなか地域の中だけでは承認が得られにくい中で、認められない子が色々な人に認められる場でもあるので。また、発表のために自分でプロジェクトをまとめていったり、審査員や周りの人たちからフィードバックされたりすることで初めて「実はこうだったんだ」「自分ってこんなこと考えてたんだ」とか、意味づけや気づきを得られるというのもありますね。

 

 

◆伴走者として関わる上でのやりがい・モチベーションは何でしょうか?

 

マイプロでは、高校生はサービスの受け手ではなく、自分で仕掛けてことを起こす「プレイヤー」です。やりたいことが教育でも福祉でもファッションでも同じこと。自分の人生をプレイヤーとして主体的に生きる人が増えていくことが面白い世の中につながると思っていて、マイプロをやりたいという高校生をサポートしたり一緒に考えたりすることは、微力ながらそんな社会を作ることに繋がっていくのかなと考えています。
社会もそうだし、もちろん個人としても、一人一人が自分の人生を前向きに捉えて生きていってほしいという願いがあります。そういう前向きさから主体性が生まれる。みんながマイプロをやる、というのは1つの最終形態としてあるんじゃないかと思います。
とはいえ、いきなりマイプロをやるのって結構ハードル高いんですよね。自己肯定感をあげるようなものとか、ナナメの関係とか、「自分もなんかやるぞ」って思えるような、必要なステップがあるんじゃないかと思っています。
今は一部の高校生だけですけど、そういう活動をさらに広げていければ面白いですね。

 

 

◆伴走者として気をつけていることや、基本的なスタンスについて教えていただけますか。

 

当然のことのようですけど、「こうだ」と決めつけない、ということです。正しいやり方を教えることはせずに、選択肢とか可能性を広げる。決めるのは当然、本人です。こちらはできるだけ、色々な考えを相対化して提示するように心がけています。
あとは、個人的には「僕のおかげ」って思われないようにしたいと思っています。「〇〇さんのおかげで今の私があります」とは言われたくないし、依存されてもいけない。「地域の人のおかげ」とか、ひいては自分自身の力でやったぞという風に思ってほしい。もちろん頼られたり感謝されるのは嬉しいですが、その子の将来を考えた時に自分で頼る先を増やしてほしい、見つけられるようになってほしいなと思っています。
それと、伴走するにあたって僕の大元の考え方になっているのは、(慶應義塾大学特別招聘准教授の)井上英之さんのお話です。「北極星」という言葉を使われていましたけど、あまり地域課題とか社会のニーズがどうというより、「自分が思っている」ことを大事にすること。「自分だけかもしれない」と思っていることにも、そこには代表性があって、他に同じことを思っている人がきっといるはず。自分の思いが社会を変えるきっかけになるんだ、ということを示していけたらと思いますね。

 

 

◆マイプロの伴走をする中で、自分たちの他に学校や他の団体などと協働することはありますか?

 

あります。1つは、「いしのまき学校」の「チューター」の存在です。石巻で働いてるお兄さんお姉さんで、参加者やメンター、相談相手として高校生と関わってくれています。
それから、石巻の中であれば、例えば漁業に興味がある子には漁師の方とか、プロジェクトによって都度繋がった方が良さそうな人は紹介したりしてます。

 

 

◆言葉は変ですが、そういった地域の中のつながりだけで十分プロジェクトが行えるのでしょうか?

 

リソース云々というより、「まずは地域に目を向けようという感じです。プロジェクトによっては仙台とか、他の場所で繋がりを作る高校生もいますけど、とりあえず最初の一歩としてやるなら身近な地域から始めた方がやりやすいし動きやすい。それでやってみると、地域の中だけでも結構な広がりがあると感じますね。

 

 

◆高校生のプロジェクト活動を継続したり、地域や学校で浸透させるために行っていることはありますか?

 

少し遠回りではあるのですが、地域で教育のシンポジウムを開いて、地域の中で若い子たちを育てていく必要性を行政・学校・地域のいろんな人たちと考える場を設けています。
あとは、高校の中で出前授業として「高校生と地元若手社会人の対話」プログラムを行なっています。なぜなら、高校生にとっても地域の社会人にとっても、ネットワークづくりにつながるからです。彼らをいしのまき学校のプログラムにチューターとして巻き込んで、伴走者として関わってもらうように動いています。そんな風に、別の形で関わった社会人もマイプロの伴走者になるような仕組みを作っていて、ここをもっと増やせれば面白いことになるかなと思っています。
あと、今関わっているいくつかの学校でも、探究とかアクティブ・ラーニング的な授業のサポートをしているので、その中でもマイプロに近いことはできるかなと考えています。

 

 

◆地域と学校をつなぐコーディネーターとしてというよりは、授業に直接入っているのでしょうか?

 

そうですね。市内の2〜3校に入ってます。「いしのまき学校」も、学校の活動だけで飽き足らない高校生にとってはすごく大事な場所なんですが、たくさんの高校生を巻き込めないことに課題を感じていました。それで2015年くらいから学校に入っていかなきゃと思っていて、最初はボランティアなどで地道に関係性を作りながら、授業のお手伝いをするようになり、徐々に一緒に考えたり、時には自分たちから提案したりするようになりました。
文科省の地域学校協働活動推進事業の流れにも後押しされていると感じますね。

 

 

◆活動していく上で、「ここがもっと変われば活動しやすいのに」と言ったような、制約になっている外的な要因はありますか?

 

端的に言えば、予算的なことですね。2013年に始めた当初は高校生のマイプロに対するニーズも少なくて、ニーズ開拓から始まったんです。でも徐々に学校でもやりたいと言ってくださったり、先に話した文科省の方針とか、全体の流れが追い風にはなってきているように感じます。環境は整ってきていて、コツコツやっていれば広がるだろうという実感もあります。あとはこの動きを継続・拡大していくために、どう財源を確保するかというのが切実なところです。

 

 

◆これからマイプロ伴走をはじめたい、より発展させていきたいと考えている他の方々へメッセージを!

 

伴走をしていると、高校生の「これが好き」「これに興味ある」っていうのに気づく瞬間に立ち会える喜びがあります。あとは単純に、高校生のプロジェクトに関わることは楽しいし、彼らの成長を通して自分も頑張ろうと思える。高校生に言ったことは自分にも返ってきますし(笑)。
高校生の未来とか進路にも関わってくることだから、責任を重く考える人もいるんですけど、あまり肩肘張らずにやれる限りでやるのがいいと思います。僕らの考えっていうのは数多ある大人の一つの考え方でしかないし、だからこそ自分だからできる話をすればいい。自分なりのやり方で高校生と向き合っていくことができれば良いのではと思います。

 

 

※斉藤さんが伴走者を務める「いしのまき学校」

活動の詳細はこちらのサイトからご覧いただけます。

 

 

(取材:2018年10月19日、文:和田 果樹)

※インタビューの内容は取材当時のものです。

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