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05/28更新版

2026.05.28

  • #レポート

探究学習の推進に試行錯誤した半年間で得た”学び”を発表――「探究スタートアップラボ」2025年度第3回研修レポート

日本全国の教育支援団体や学校と連携し、実践型探究学習「全国高校生マイプロジェクト」の推進に取り組んできた認定特定非営利活動法人カタリバ(以下、カタリバ)が、全国の高等学校を対象に実施している「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発研修「探究スタートアップラボ」。最終回である今回の第3回研修では、9月からの約半年間、自校での探究学習推進に試行錯誤してきた先生方が各校のカリキュラム案や、作成のプロセスでの学びを発表し合いました。その様子をレポートします。

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自校で探究学習推進に邁進した14校の先生方が、半年間の集大成をシェア

第3回「探究スタートアップラボ」研修は、2026年3月20日、昭和女子大学にて開催されました。第1回研修での「自校で育みたい生徒像、資質能力の検討」、第2回研修での「自校の特性を踏まえた探究カリキュラムの作成またはアップデート」を経て、今回は各校が作成したカリキュラムおよびそのプロセスで得られた学びを発表。サポーターや他校の先生方からのフィードバックを通じて、今後の実践に向けた課題の共有や解決策の検討を行いました。

今回の研修は、マイプロジェクトに取り組む高校生が全国各地から集う「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit」(以下「全国Summit」)との同時開催。後半の「学びの発表会」には全国Summit参加校の引率の先生方や、奥能登地域から招待された先生方も観覧として参加され、全国各地の先生方がつながる交流と学び合いの場となりました。

また、特別ゲストとして内堀繁利さん(信州大学教育学部特任教授)がご参加された他、各地でさまざまな形で探究活動に携わる皆さまがサポーターおよびファシリテーターとしてご参加くださいました。

▼サポーターのみなさま(五十音順)
酒井 淳平先生(立命館宇治中学校・高等学校 教諭)
中村 伶詞先生(島根大学大学教育センター 准教授)
中森 一郎先生(福井大学連合教職大学院 教授)
南郷 市兵先生(福島県大熊町立学び舎ゆめの森 校長・園長(肩書は昨年度末時点))
廣瀬 志保先生(山梨県立笛吹高等学校 校長)

▼ファシリテーターのみなさま(五十音順)
伊藤 真結さん(一般社団法人cotohoku 代表理事・全国高校生マイプロジェクト宮城県パートナー)
井上 丹さん(八戸学院大学 特任准教授・全国高校生マイプロジェクト青森県パートナー)
円光 歩さん(一般社団法人まなびのみなと・全国高校生マイプロジェクト広島県パートナー)
中本 陽さん(一般社団法人きみライト・京都先端科学大学付属中学校高等学校 教諭・全国高校生マイプロジェクト大阪府パートナー)
山本 竜也さん(島根県立津和野高等学校 特任コーディネーター・津南町 総合・探究活動アドバイザー・全国高校生マイプロジェクト新潟県パートナー)

1.「今年1年頑張ったこと」をテーマにアイスブレイク


異なる学校の先生方と特別ゲスト・サポーター・ファシリテーターのみなさまが
5名前後のグループとなり研修スタート

ある先生からは「探究活動のお手本を生徒に見せるため、自分自身のマイブームだった肉まんをイチから作ってみた」といった探究学習ならではのエピソードの共有もあれば、別の先生からは「やんちゃな生徒たちに、生徒同士の議論に参加してもらうにはどうしたらいいか」といった、実践を行ったからこそのリアルな悩みの共有も。半年間、それぞれの学校で探究学習の推進に邁進してきた先生方。互いの「頑張った」エピソードに共感しながら、時に労り合い、時にアドバイスを送り合っていらっしゃる様子でした。

2. 小規模グループでの発表だからこそ、活発な意見交換が行われた「プレ発表」

ブースに分かれての学校単位で発表を行う「学びの発表会」の前に、各グループにて全ての先生方が自校の成果を発表する「プレ発表」が行われました。それぞれの学校の代表の先生だけでなく、チーム全員が自分の学校のこれまでの取り組みを言葉にすること、また、より多くの学校の取り組みを知ることができるようにという工夫です。少人数グループでの発表ということもあってか、質疑応答の時間では様々な質問が上がり、ナレッジシェアが活発に行われたようでした。

▼とあるグループの質疑応答のシーン
Q:生徒のプロジェクトと地域企業との連携の際、お金はどう工面してますか?また、教員の伴走体制はどうしていますか?
A:協力してくれる企業とは、あらかじめ予算や売り上げの話もしておく。また、開発・生産は協働し、販売は高校生が、といった役割分担も併せて相談する。食品の商品開発プロジェクトに関しては家庭科の先生がバックアップに入ってくれました。

3.「学びの発表会」で半年間の成果を発表

プレ発表のあとは、いよいよ本番である「学びの発表会」。参加校の先生方が5つのブースに分かれ、自校での取り組みと成果の発表およびサポーターとの対話を行いました。会場には全国Summit参加校の伴走者のみなさんや、奥能登地域からご参加の先生方も合流。総勢約100名の方々が集まり、和やかな雰囲気でスタートしました。


見学として参加された
全国Summit参加校や奥能登地域の伴走者の皆様

発表を行うそれぞれのブースには、サポーター・ファシリテーターが1名ずつ参加。発表者に対してのフィードバックをいただくとともに、今後につながる問いを投げかけていただきました。

発表ブースの様子。参加校の発表およびサポーターとの対話が行われます。
他校の先生方も熱心に聞き入っている様子でした。

 

ここからは、発表を行った2校の具体的な取り組みを紹介します。

探究学習においてより生徒の主体性を引き出したいと考えていたA高校。

A高校発表の様子

教員向けの校内研修の実施や、他校への視察や他校の先生の招聘、先生自身の”やってみたい”を形にするプログラムを実施。併せて生徒向けのアクションとして外部コンテストへの応募や、地域や企業との連携、新入生向け探究発表会を行ったと言います。

これらの取り組みの結果を、先生はこう語ります。

最も変化が大きかったなと感じているところは、教員がワクワクしたり、探究にマイナスなイメージがあったのが「こんな楽しいことやってみたいよね」みたいな会話が職員室に広がっていったところです。

また、発表の最後には、第3回である今回で初めて研修に参加したという先生から、ご自身の自己変容について語られました。

私自身このスタートアップラボ初参加です。最初は「後からついていけばいいや」ぐらいに思っていたが、次第に「自分も一緒に先頭に立っていった方が面白いな」と思うようになった。そのワクワク感があり、先ほど発表にもあったインタビューシッププログラムの運営を学年主任として2026年度は担当させてもらうことになった。

先生方ご自身が探究活動の推進を楽しもうとされている様子、またその熱量が教員間で広がっていく様子が大変印象的でした。

発表後には、サポーターの南郷市兵先生からこのような問いも投げかけられました。

専門学科では理想の生徒像がハッキリしていて、弟子のように生徒を鍛えることが多い。それが実践的な生きた力になる面もあるが、一方で生徒たちの人生の可能性や選択肢は非常に幅広いもの。総探をやると生き方・あり方が変わるかもしれない。例えば「探究で取り扱った領域と、学科で学んだ保育福祉領域とを掛け合わせて、こういう保育士になりたいな」と考える可能性もある。総探と専門学科の連携のプランはありますか?

A校の先生は既に同様の課題意識を持ってらっしゃるようで、下記のように回答されていました。

総探を担うのは専門学科の先生方、ということは去年からずっと伝えられていて、先生方も理解している状態。ただ、教員としてゴールを示したいという傾向はやはりあるので、探究を理解してもらうために生徒の姿を見せるのが早いのではないかと考えています。

内定者向けに総探発表会を実施した際、専門学科の先生が「探究って成功がなくてもいいんだね」っておっしゃっていた。また、ゴールをそれとなく示されながら探究を進めた生徒が、発表時に「これだけじゃ本当の解決につながらないと思う。次はこうしたい。」と発言し、その様子が教員に響いていたようでした。

校内の先生方に探究の価値が伝わった実践的な事例のお話を、他校の先生方や伴走者のみなさんも大変興味深く聞いてらっしゃる様子でした。

対話するA高校の先生方と南郷先生

 

続いて紹介するB高校は、多様な背景をもつ生徒が多く在籍する中で、卒業後も見据えたカリキュラムをどう作るのかについて考えたいと思っていた定時制高校。教員同士の対話、生徒同士の対話を大切にしながら探究活動の校内推進を進めてきました。

B高校発表の様子

サポーターの中森一郎先生は、定時制高校であるB校の取り組みの意義を以下のようにリフレーミングしてくださいました。

生徒たちの中には、最初は
「本当にここにいていいんだろうか」と感じるところからはじまり、周りとの関係を築きながら自分の居場所を見つけ、自分のあり方を考えていくような、変容に時間がかかる生徒もいるのではないかと思います。でも、生徒たちに共通しているのは「一人一人の自分を認めてほしい」ということ。人との対話を通して「自分のことちゃんと見てくれる人がいるんだ」「尊重してくれる人がいるんだ」と思える環境を学校として整えていくことがとても大事だと思います。そういう意味で、B校の取り組みは学校のカリキュラム全体の中で、生徒同士、地域の方、企業の方との対話をとても大事にしている。対話を通して自分の気づきがあったり、他者から学んだり。少しずつ自己肯定感を高めていく仕掛けになっているように思いました。

「対話を通じて自己肯定感を育む、そのきっかけとしての総探」という、大切な価値に改めて気づかされるフィードバックでした。

4. 半年間走り抜けた先生方へ「修了証書」を贈呈

発表後には、半年間にわたって試行錯誤を重ね、さまざまな壁や葛藤を乗り越えてきた参加校14校の先生方へ、修了証の授与が行われました。

修了証を受け取る各校の先生方

修了証贈呈後、特別ゲストの内堀繁利さんより全体講評をいただきました。

探究には正解がない。生徒の数だけ探究はあるし、学校の数だけ探究の仕組みはある。だから、一番大事なことは試行錯誤すること。うまくいかないことは問題ではない。うまくいかなかったら、そこで「どうしたらうまくいくか」あるいは「何が原因でうまくいかないのか」と不断の見直しをすることが最も大事なことだというふうに思っています。

人間は生まれながらにして好奇心や探究心の塊である。つまり、「邪魔しなければ子供たちはどんどん学んでいく」という人間観の土俵に立たないと、探究というものは本当には成立しない。「子どもってどんな生き物なんだろうね」とか「高校生って本当はどういう考え方なんだろうね」とか、「学ぶというのはそもそもどういうことなのか」「受験勉強が辛いと言っているけど、学びは辛いものなのかな」とか、そういったことを先生同士で日ごろから議論していくことがすごく大事なことなんじゃないかなと思います。

また、学校が行かなきゃいけない場所じゃなくて行きたい場所になっていくためは、「発見」とか「感動」に溢れる場所であることも必要だと思うんです。探究はそれ(学校を行きたい場所にしていくこと)を支える非常に重要なピースになりうると思っています。以上で、私からのお礼と感想としたいと思います。ありがとうございました。

半年間にわたり自校の探究学習推進に先生自らが挑戦し続けた「探究スタートアップラボ」。昨年度からの継続校、今年度からの新規校が入り混じり、より深みのあるコミュニティとなりました。参加の先生からは「自分たちが考えてきたカリキュラムなどを見てもらい色んな方からフィードバックをいただけるのはすごく貴重な機会だし、今までなかった視点から自分たちの学校のことを考えられるし、すごく貴重な場だなと感じております。こういう場があることで心が折れずに頑張れた」とコメントをくださいました。また、見学された先生からは「いろんな学校の発表を聞かせていただいて、まずは率直に自分自身がものすごいワクワクしました。このワクワクという感情を学校にいる生徒にも感じてほしい」といった声も上がっていました。

関係者と対話を重ね、悩み、そして面白がりながらカリキュラムをつくり、実践していく。――今回の研修を通じて先生方が見せてくださった姿こそが、まさに「探究的なあり方」そのものではないかと感じました。こういった先生方の「探究的なあり方」が、高校生たちの探究的な学びに火をつけていくのではないでしょうか。

参加者全員の集合写真

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【探究スタートアップラボの運営】

主催:全国高校生マイプロジェクト全国事務局
助成:一般財団法人三菱みらい育成財団

文:岩城佳那(ライター)

 

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