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マイプロニュース

【MY PROJECT AWARD】伴走者インタビュー(5)「本当にいい探究は、教科の学びを加速させる」

2018.12.17

伴走者インタビュー

全国高校生MY PROJECT AWARD 伴走者インタビュー(5)

太田稔さん(岩手県立盛岡第一高校(当時)/ 北海道登別明日中等教育学校教諭)

 

 

Interview|

 

 

■マイプロジェクトに関わる最初のきっかけは何だったのでしょうか?

 

当時、勤務していた盛岡第一高校は文科省のSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)の指定を受けており、生徒が授業の中で「課題研究」として取り組みをしていました。私はその課題研究の担当で、全体の取りまとめを行なっていたんです。

そんな中、たまたまマイプロ事務局の方から「マイプロジェクトアワードに出ませんか」というお誘いをいただきました。SGHの予算も限られる中で当初は渋っていたのですが、交通費の補助を頂けるとのことだったので、それなら…ということで(笑)、課題研究の中で「マイプロジェクト」の考えに合いそうな何人かの生徒に、アワードに出てみるよう勧めたというのが最初です。

 

■昨年、太田先生が勤務されていた盛岡第一高校からは3プロジェクト出場されています。先生は、その全ての課題研究のサポートをしていたのでしょうか?

 

それぞれに担当者の先生がついていますが、私は全体を統括する役割でしたので、生徒の誰がどんな探究をやっているのかをおおよそ把握していました。課題研究は基本的に授業の中で完結するのですが、生徒に廊下で会った時に話を聞いたり、声をかけたりしていました。

そもそもマイプロアワードに出すためにやっていたわけではなかったので、あくまで課題研究が進むように働きかけをしていましたね。

 

 

■「マイプロのため」「アワードのため」に何かしていらっしゃったというわけでなく、総合学習の「課題研究」の授業での取り組みがマイプロにつながっていったのですね。太田先生の中で、課題研究とマイプロの違いはどういった点だとお考えですか?

 

マイプロは「主体性」を大事にしていますよね。アワードを生徒に勧める際にはそこを意識しました。当時の勤務校では、4月から3ヶ月かけてじっくりテーマを決め、そのあと探究を進めていくのですが、アワードに出るか出ないかを考えるタイミングでは、すでに1年の半分以上が過ぎていましたので、その時点で探究を「楽しんでいるかどうか」は、個々の生徒を見ていればわかります。授業の枠の中ではあれ、「主体性」を持って楽しみながら自分のテーマに向き合っている子は、マイプロ的だなと思います

 

 

 

■マイプロや、そういった熱心に探究を行う高校生を見ていて、教員としてどんなことを感じられますか?

 

彼らから学ぶことはたくさんあります。取り組みの中で、生徒は化けるんですよね。探究を進めていくうちに、学びに対してどんどん貪欲になるというか。今まで我慢して机に向かっていた子どもたちが、のびのびと学ぶようになっていく。当時の勤務校はトップ校だったので、私が見ていた生徒は学力層の高い高校生たちでしたが、彼らの多くはなぜ勉強するのかを疑問にも思わず、とにかく得意なこと(勉強)をただやっているだけだった。中には点数の順位で自信を失い、学びへの意思が減退してる子もいました。それが、課題研究の中で「なぜ学ばなければならないのか」を実感し、教科学習も含め、学ぶ意味がつながっていくんです。それまでは「受験のため」だったものが、より本質的なものとなり、学びに対する価値観が変化していく

そんな風に生徒が変わる瞬間は、一度見るとやめられないな、と思います。

 

 

■「マイプロ」「探究」的な学びそのものに意義があるという風に感じましたが、そこにとどまらず、アワードに参加する意義や価値はなんだと思いますか?

 

アワードの設計が素晴らしいなと思うのは、リフレクション(振り返り)がしっかりしているというところです。自分自身がプロジェクトを通じて学んだことはなんだったのかをしっかりと考える。大人が順位をつけて終わりではない。もちろん発表を通じてアウトプットすることも大事ですが、ただアウトプットするだけだったら、アワード以外にも色々な場があります。

また、実際にアワードやスタートアップの現場に行って感じたのは、参加者同士が交流して、化学反応が起きるチャンスがあることのよさです。高校生たちは、高校に入った時の序列で勝手な思い込みを持っているところがあります。進学校は優秀だとか、偏差値が低いからどうだとか…でも、例えば農業や商業などの専門高校って、入学後に努力しているところが普通科高校と違っていたりしますよね。実際に発表を聞いてみると、偏差値に関係なく、すごく光るプロジェクトや、大人も舌を巻くような探究を行っている高校生たちがいる。そういう発表を見て、私の勤務校の生徒たちも驚き、大いに刺激を受けていました。すごく驚いていたし、同時に悔しそうでしたね。

そういう、それまで交わらなかった子たちの凄みを知る機会は、本当に大事だと感じます。世界が広がるような感覚を得られますよね。アワードという場はそういうところがいいな、と思います。

 

■太田先生にとって高校生のマイプロや探究をサポートする上でのやりがいや、モチベーションの源泉はなんでしょうか?

 

そのままでは語弊がありそうですが、私は「自分のためにやっている」と思っています。面白い老後を過ごしたいなと思った時に、自分の老後を作るのは今の子どもたちです。その子たちがつまらないと感じていると、きっと自分の老後もつまらない。今やっている勉強やあらゆることを「受験のため」としか考えず、入試に必要のないものは切り捨てるような子たちばかりにしてしまうと、私たちが高齢者になった頃には、きっと彼らに切り捨てられてしまうんじゃないでしょうか(笑)。そうではなく、もっと広い視野を持って、自分たちの住む「社会」について考える人に育って欲しい。とはいえ変に頭を硬くして真面目に考えすぎるのも困ります。硬い世の中になってしまいますから(笑)。自分が面白いと思うことを大事にして欲しいし、自分が住む世界を面白くしよう、と思ってほしい。そんな風に精一杯ぶことを楽しんでいける人を増やしていきたいと感じています。

そして「進学校」と言われる学校こそ、やらないといけないと思います。だって、そこを出る人たちはこれからの日本を支える、国や社会を背負って立つ人々な訳ですから、社会のことを真剣に考えられる人でないと。でも、やっぱり根っこのところでは楽しんでほしい

探究をやっていくと、どこかで生徒のスイッチが入る瞬間があって、それがやりがいだと感じますね。

 

 

■生徒との関わりの中で、気をつけていたことはありますか?

 

「先生」として関わるわけなので、そこは難しさを感じています。生徒はどうしても先生の言うことを聞いてしまうし、影響も受けてしまいます。教師は喋るのが商売でもあるので、生徒の活動に入っていく時、いつのまにか「解説」をしてしまいがちなんですよね。そして、いつのまにか先生が話したとおりになっている…。私自身もしまったな、と思うことはよくあります。説明するのではなく「なぜ?」という「質問」を投げかけ、なるべく生徒から引き出すように心がけています。

 

 

■「課題研究」の授業を行う中で、地域や学校外の団体と協働することはありますか?あるとすれば、どのように行っているのでしょうか。

 

盛岡一高では、盛岡市役所と連携していました。1年次に盛岡市の地域課題を考える探究を行うのですが、盛岡市の担当の方やジョブカフェの方が、様々な分野で活躍している方を10名くらい集め、ミニ講座のようなものを行なってくださって。その後、フィールドワークの場や話を聞かせてくれる地域の大人を紹介してもらう。「どこでもいい」わけではなく、担当の方が直接お会いした方の中でも、生徒の学びを大事にしてくださる方ばかりを紹介してくださったので、安心してお任せすることができました。

地域の資源を活用する」ことの重要性は、新学習指導要領にも書かれています。こうした行政との連携も、地域の中にある重要な教育資源のひとつ。探究の授業におけるこういった協働は、今後も色々な場所で徐々に可能になると思います。

 

 

■マイプロや探究的な学びを推進していく中で、制約になっていた外的な要因はありましたか?

 

制約というか、なかなか周囲から理解を得づらい部分も正直ありました。私としてはマイプロや探究が入試とバッティングするとは思っていないし、「探究が教科の学びとつながる」と確信しています。同じように考えている先生方もたくさんいます。一方で、探究をやることで「受験勉強の時間がなくなる」「机から離れて遊んでいるように見える」という考えの先生方もいらっしゃいます(私自身も以前はそうだったので、気持ちは理解できます)。でも、半年ほど経って生徒が目の色を変えて取り組むようになると、先生方も理解してくれましたし、「太田先生が何をやろうとしているかがわかった」という言葉もいただきました。やっぱり教育者としてはみんな同じですから、生徒が変わるのを見ると心動かされるものなんですよね。

 

ついでに言うと、もちろんありとあらゆる「探究」が全て良いものとは限りません。「マイプロジェクト」では、本来ハンドルは生徒自身が握るもの。でも先生の指導が入りすぎると、先生がハンドルを握ってしまうことも度々起こります。たとえ出来上がったポスターが立派だったとしても、やらされ感が出てしまっていたり。これからそういう探究が増えるのではないかと危惧していますが、そういった探究だと、生徒は化けない。生徒が化けない探究は、教科の学力とバーター関係のようになって、相乗効果を出すことができません。本当にいい探究は、教科学習とバッティングするどころか、改めて学ぶ意味に気づかせてくれる。そういう意味でも、マイプロや探究的な学びは非常に大切なものだと思います。

 

 

■お話にあったように、現場ではなかなか理解が得られない中で、どのように対応をされていたのでしょうか?

 

完全に理解されてのスタートではありませんでしたが、先生方が「何をやろうとしているかわからない」という状況でも思ったことをやらせてくれたこと、応援してくれたことに感謝しています。

やや逆説的ですが、こだわり続けているのは「進路」「偏差値」です。いくら探究的な学びが大事だと言ったって、生徒の進路を預かる立場である限り、単なる「探究人間」になってはいけないと思っています。もっというと、「入試vs探究」という構図になってはいけない。

生徒がどの道に進むか、どこに進学するか…まず、私自身が「入試」にこだわり、探究を頑張った生徒がしっかりと志望の大学に合格し、一般入試のペーパーテストに向けて頑張っている子たちと比べても遜色ない結果を確実に出せるんだということを示すようにしています。つまり、探究をしっかりとやっていれば学力も上がるということを示す。そのためにデータも集めています。

もちろん進路指導はその子自身のためというのが第一ですが、現場において「探究と教科学習が相乗効果を生む」という主張をするためには、しっかりと成果を出すことが大事だと思っています。

 

 

■これからマイプロ伴走をはじめたい、より発展させていきたいと考えている大人、特に学校の先生方へメッセージをお願いします!

 

私が最近他の方に言ってもらってハッとした言葉なんですが、「学校の外に出ましょう」ということです。外に出れば同じことを考えている人が必ずいて、面白い刺激がたくさんある。教育業界以外の方との出会いは特に刺激的です。ぜひ、学校の外の研究会に出たり、積極的に外の空気を吸っていきましょう。何よりもまず、自分自身に言ってあげたい言葉ですが(笑)

 

(取材:2018年11月21日、文:和田 果樹)

※インタビューの内容は取材当時のものです。

 

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現在「全国高校生MY PROJECT AWARD2018」出場者の一般エントリーを受付中です!

受付期間は2019年1月15日(火)まで。

エントリー・詳細はこちらから:http://myprojects.jp/award/award2018/

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■全国Summit(文部科学大臣賞授与)2019/3/22(金)~24(日)

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