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マイプロジェクト

地域Summit

2021.8.2

卒業生インタビュー〜「死ぬまで取り組みたい」探究に懸ける大学生が見つけた”生きがい”とは

 

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本インタビューは、秋頃リリース予定のマイプロジェクト卒業生限定WEB「マイプロNEXT」の先行公開コンテンツです。

マイプロジェクトアワード過去出場者の皆さんは、WEBの完成をお楽しみに!

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マイプロジェクト卒業生の船野杏友さんは高校1年生の時、地元である大船渡の地下水と柿を使ったニアウォーターづくりのプロジェクトで、マイプロジェクトアワード2017文部科学大臣賞を受賞した。

もともと、理科や実験することが好きで、高校時代は夢中になって取り組んだ。それでも船野さんが選んだのは化学の道ではなく、自分自身を「探究」に導いてくれた教育への道だった。

 

マイプロに取り組むきっかけとなった探究学習の授業では、一部「めんどくさい」「やりたくない」という雰囲気もあった高校時代。自分自身は探究にのめり込んでいった一方で、同級生たちに「優等生」のような扱いをされる時もあり、引け目を感じてしまうこともあった。その頃の複雑な感情が、彼女にとっての原体験になった。

 

そんな中でも探究を進めていく中で、自分の活動を本気で応援してくれる先生、企業、地域や大学の人達や、自分と同じようにマイプロに夢中で取り組む高校生との出会いがあった。そこで彼女は、自分の生きやすい世界を見つけられたという。一方で、もしかしたら過去の自分のように、探究に一生懸命になりたくても周囲の環境や反応に悩んでいる子が全国にいるかもしれない。そんな高校生たちの、力になりたい。

 

その願いを実現する力をつけるために進学したのは、マイプロジェクトに取り組んだ高校生たちも多く通っている、慶應義塾大学総合政策学部(以下、SFC)だ。

船野さんは現在大学2年生。マイプロを通して次なる目標を見つけた彼女が、新たな一歩を踏み出した先で思うこととは。

 

 

 

「死ぬまで取り組みたいテーマがある」

 

ーー今は大学2年生。大学は、実際に入学してみてどうですか?

SFCに入ると同時に、鈴木寛先生主催の研究会(以下:すずかんゼミ)に入ろうと元々決めていたんです。鈴木先生が教育の分野でご活躍されていることをアワード通して知っていたのはもちろんなんですが、ソーシャルプロデューサーを育成するゼミであることに惹かれました。教育だけを専門的に学ぶというより、いろんな分野の最前線で活躍している先輩たちや他大学の学生も含めたゼミ生たちと刺激し合いながら、教育も学べる場に興味があったんです。大学の授業は興味のあるものを選択しつつ、自分がやりたい教育分野についてはゼミの中の活動で学んでいます。

 

 

ーー「教育」が今も学びのテーマなんですね。ゼミで行っている活動を詳しく聞かせてください。

はい、教育は、死ぬまで取り組みたいテーマだと思っています。ゼミのプロジェクトでは、高校生の探究活動をサポートしています。今まで私が出会ってきたマイプロに取り組む高校生の多くは、主体性を持っていて自分から積極的に動いていく人たちでした。でも、今ゼミのプロジェクトで関わる高校生の中には、「何もやることないです」とモチベーションの低い生徒も少なくないんです。ゼミ活動を通じていろんな高校生がいると気づけたと同時に、生徒の本音ややりたいことを引き出す、対話の大事さも実感しました。生徒の状態に合わせて接し方を変えていくことが徐々にできるようになってきたと思います。

また同時に、探究を進めていく上では「生徒に委ねる」というのも重要なことだと感じました。今まで私は、生徒に悪気なく「これをやってみよう」「こっちが面白いんじゃない?」と声かけをしていたことがあったのですが、ゼミの先輩をみると、そういった特定の方向に誘導するようなことは言わず、ただずっと生徒たちを見守っていたんです。その姿を見て、生徒を信頼して一歩引いて見てあげることが、生徒自身が自分で考え行動できる環境につながるんだと気づきました。

 

 

ーー関心のある分野で活動できること、同じ興味関心を持つ人と学べるのはゼミの強みですね。大学に入学してから印象に残っているエピソードはありますか。

そうですね…私は探究学習を研究したいという理由でこのすずかんゼミに入ったのですが、ゼミの先生をはじめ、周りに探究学習をテーマに活動を進めている人もたくさんいて、そんな中で私がやる意味あるのかな?と考え込んでしまった時期がありました。その時に、先生が「でもそれが好きなんでしょ。好きなことするのに理由なんていらないよ」と言ってくれたんです。「自分は文科省の人や大人のマインドに働きかけることは出来るけど、高校生の心は動かせない。でも船野さんにはできる。先を進んでいる人は何でも出来るように見えるけど完璧じゃない。船野さんにできることを見つけて、そこで輝けばいいんだよ」とも伝えてくれました。

その言葉は、今でも不安になった時の心の支えになっています。「自分が好きだからやっていいんだ」というのは、自分が動いていく上での軸にもなっていますね。

 

 

ーー教育と言ってもいろいろ分野がありますよね。船野さんは「探究学習」がテーマということでしたが、今後力を入れてみたいことはありますか?

探究学習は最近広がっていますし、自分も今高校生と関わっていて、より多くの生徒たちに、外の世界にたくさん触れて、自分にとっての最適解を見つけて欲しいと感じています。そのためにも今後は、生徒が学ぶ場を最前線でつくっている学校の先生にもフォーカスを当てた活動が何かできたらいいなと思っています。

もう一つは、探究学習の”ものさし”についてです。探究学習では、主体性や協働性などの非認知能力を重視されている部分がありますが、それらは数字などで客観的に測定することが難しいもの。一方で今、大学の授業で「いかにエビデンスが重要であるのか」について学んでいます。エビデンスの概念は、探究学習の評価にも当てはめることはできないのだろうかと思うようになりました。探究の”ものさし”の研究が進めば、もっと探究学習の重要性が認知されて、より多くの人たちに広まっていくのではないかと。今までは実際に生徒がいる現場で自分がどうするかを考えることが多かったのですが、こういった研究にも関心を持つようになりました。

 

 

 

 

生きがいに気づくこと。フィロソフィーを持つこと。

 

ーー将来のことで今、考えてることはありますか?

自分のやりたいこと、探究に携わりたいということは決まっています。ただ、どこのフィールドに根を張っていけば良いのかはまだまだ考え中です。高校生とわくわくを共有したり、教育に関わり続けるという自分の”生きがい”は、多分20年後、30年後も変わらない。そこだけはぶらさずに、その上で自分がすべきと思ったことに取り組める場所を選んでいけたらいいのかもしれません。

 

 

ーー生きがいと呼べるものがあるっていいですね。しかし見つけるのも難しそうです。船野さんはどうやって生きがいにたどり着けたのか気になります。

ひとつは、高3の時に悩んで悩んで、SFCに進学すると自分で決めたことは大きいですね。自分の素直な気持ちに立ち返って決めた進路だからこそ、今行っている活動に自信を持って取り組めているのだと思います。

もうひとつは、自分の感情に気づけたことです。高校時代マイプロに取り組んでいた時に、「そんなことせずに遊んだ方がいいじゃん」「やらなくてもいいじゃん」って言われた時もあったんですけど、マイプロってそういうのとは違う楽しさなんですよね。今の状況もそれと同じで、高校生がワクワクしている様子や悩んだりする時間を共にすることは、ただ遊んでいる時とは別の楽しさなんです。高校生と接する中で上手く想いを伝えられず、もどかしく思うこともあるけど、「あゆさんと話せてよかった」「ファシリでいてくれてよかった」と言葉をもらった時に、どんなに苦しいことがあっても頑張れると感じられたんですよね。自分はそういった体験が人生の中で1番嬉しい、それがあったらどんなことでも頑張れると思った。そんな感情に、早い段階で気づけたから、今も迷わず教育に関わっていられるのだと思います。

 

 

ーー大学選択の時も、今も、船野さんは「見つける力、気づく力」があるように感じました。生きがいと言えるまでにつながる経験って、出会いもそうだけど、まず自分自身がそれに気づけるかどうかも鍵ですよね。見つけるために大事にしていること、物事への向き合い方は何かありますか。

とことんやってみる」がまず第一歩かな。とことんやってみる中で、いろんな場所に行き、いろんな人と関わる。そうすることで、自然にたくさんのつながりができていき、次第にチャンスも増えていく。

そして、大切なのはチャンスと出会った時に自分が「どんな選択肢を選ぶか」ということ。選択の上では、自分のフィロソフィー(哲学)を持つことが肝心であるということをゼミで学びました。

誰でも、自分の今までの人生の「選択の傾向」ってあると思うんです。なんとなくで決めてるかもしれないけど、実は「こうだから好き」「こうだから心地いい」みたいな、絶対に言語化できる理由がある。日々生きていていろんな選択をする中で、一つ一つ理由をじっくり言語化して、それらから共通点を抽出してまとめたものが自分自身のフィロソフィーになる。A、Bという2つの選択肢があったとして、そのフィロソフィーをもとに両方を眺めてみて、ABどちらを選んだらいいのか丁寧に考える。そんなことを地道に繰り返していると、次第に”生きがい”と呼べるような、自分の軸になるものを見つけられていくのかなと思います。

 

 

 

船野さんのこれからとメッセージ

 

ーー今後、自分が作っていきたい社会のかたち、理想の環境像などあったら聞かせてください。

探究の学びに触れる人を増やすこともそうですが、その前に、学校の中でも外でも自分が生きやすい場所や心地いいと思える場所をひとつでも高校生に渡していきたいと思っています。私にとってはそれが応援してくれた地域や企業、マイプロジェクトアワードっていう場所だったりしたけど、誰かにとっては、お家や教室、学校の先生たちかもしれない。生きやすいと思える場所をひとつでも多く持っておくことが自分の中では大切だったので、高校生のみんながのびのびと、「自分はこれが好きだ!」って言えるような環境づくりをしていきたいです。

 

 

ーー今のマイプロは?

高校生の探究支援です。私が自身のマイプロとして大事にしている価値観は、自分がgiveするだけじゃなくてtakeする関係性をつくること。高校生には、「自分たちが一方的に教えられる存在」とは思ってほしくなくて。高校生に対しても、「私は知らなかったから学べたよ、ありがとう」、「あなたの言葉や感情から私も同時に学んでるよ」ということを、常に相手に伝えるのはすごく大切にしています。

 

 

ーー読者に向けてメッセージを!

大学っていろんな楽しいことがあるんですよね。だから自分が本当にやりたいことを見失なってしまう機会も多い。私自身もなのですが、「なぜ自分がこの大学に入ったのか」「なぜ今自分はここにいるのか」を問うことって大事だなと思います。もっというと、マイプロというチャンスを掴んできた人達だからこそ、「自分が社会に対して何が出来るのか」そして「自分に対して何が出来るのか」を改めて問い直してみることが大事だと思います。探究に触れてきた人たちは社会を動かす力があると思うので、一緒に飛躍的に活動できたらいいですね!

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