【MY PROJECT AWARD】伴走者インタビュー(3)「高校生には、大人には見えない世界が見えている」
全国高校生MY PROJECT AWARD 伴走者インタビュー(3)
村瀬匠さん(ゆるぷろ)
Interview|
◆伴走者として高校生に関わるようになったきっかけ
私が高校生のマイプロに関わるようになったのは、カタリバのスタッフの方に声をかけてもらい、マイプロの最初のスタートアップ合宿(2014年の鎌倉カイギ)に知り合いの高校生を連れて行ったのが最初のきっかけでした。
◆普段、どんな形で高校生と関わっていますか?
月1回のペースで集まって、プロジェクトの振り返りや報告を行う会を開いています。だいたい1回平均6人くらい集まります。また、毎回参加する人(2か月もしくは3か月に1回がほとんど)は少ないので、毎月参加者は変わりますね。
場所は、大学の近くの貸しスペースだったり古民家だったり、特に固定せずに色々なところでやっています。
特徴として、高校生だけに限定してる訳じゃなくて、大学生や60代の方とかもいます。あと、自分のおばあちゃんを連れて来たいと言っている子もいるようなゆるい場です。
◆マイプロの活動をしている高校生を見ていて、村瀬さん自身感じていることや学ぶことはあリますか?
高校生も大人も何も変わらない、ということです。
何か新しいことに挑戦するときは、高校生も大人も不安になるし、うまくいかないことも多いです。そんな状況は誰にとっても変わらない。
そして、多くのチャレンジしている人の話を聞いていると、うまくいく理由・いかない理由は、高校生でも大人でもある程度共通しているように感じます。そういう意味において、高校生も大人も差はないなと思っています。
◆一人一人の高校生を見ていて、「この子はマイプロを通じて変わったな」と思えた印象的なエピソードなどあれば。
「ミツバチが少なくなっている」という環境啓発のために、蜂蜜を使って地元のパン屋と連携して商品開発したいと言っていた子がいたんですね。その子はいきなり「プロジェクトを始める!」と企画書を作って持ってきて、どのようにやっていくか熱心に説明してくれました。学力レベルも高い生徒で、企画書もすごくレベルの高いものでした。意気込んで説明してくれたので「素晴らしいね、一回やってみて、またどうだったか話を聞かせて」と応援したんです。
でも、1か月後、連絡を取ってみると、彼女は「プロジェクトをやめる」と言い出したんです。「なにかうまくいかなかったことがあったのかな?」と思って、「他の高校生たちもいるから、うまくいかなかったことも話しに来たら?」とゆるぷろの集まりに誘いました。
彼女の話を聞いていると、「企画書通りにうまくいかなくて、最初考えていた方法じゃ目標が達成できないことが分かり、もうこのプロジェクトは無理」だ、と思い込んでいる状態であることがわかったんですね。
この状態って、本当によくあることなんです。ほかのプロジェクトをやっている高校生たちも話を聞きながら「昔私もそう思い込んでいた」と共感していました。
そこで一通り彼女の話を聞き終えた後に、「そもそもそのプロジェクトで何をやりたかったのか?」っていう目的と、「最初に想定していた方法は無理だったけど、他にアプローチないかな?もっと簡単な方法とか」ということを色々みんなでブレストしてみました。そしたら、突然彼女の顔が「ハッ」と変わって、「なんかできると思います!」と言い始めて。そこから、またプロジェクトがさらに進んでいきました。
◆一瞬の変化でしたね。
今までの経験上、そういう状況に陥りがちなのは勉強な得意な子の方が多い気がします。効率性とかを無意識に考慮して、手段を1つに固定化しやすいのかなって思います。でもそういう子たちも、想定してたアプローチがうまくいかなくて、違う次のアプローチに気づいた時に、一気に変わっていくように感じます。
そんなふうに、プロジェクトを通じた関わりの中で、その人の物の捉え方や認識が変わることはよくありますね。
◆高校生にとって、そういう場があるのは大事ですね。
そもそも僕がやっている「ゆるぷろ」というのが、固定化していた物の認識をゆるめたり変化させたり「揺らぎ」を作っていくことが重要だと考えていて、そういうことが頻繁に生まれる場になるようにしています。自分のやりたいことをやっていくためには、それが重要だと思うので。
◆村瀬さんがみていた高校生の中には、マイプロジェクトアワードに出場した高校生も何人かいらっしゃいます。高校生がマイプロジェクトを行ったり、アワードに参加したりする意義や価値はなんだと思いますか?
うちに来る子には「アワードに出たい!」と燃えたぎっている子はあまりいないんですけど(笑)、基本的には出ようよ、とすすめています。アワードに出ると全国の地域性のある色々なプロジェクトを知れて深い学びになるし、チャレンジしている他の人たちと繋がりができるからです。
◆村瀬さんにとって伴走者として高校生に関わる上でのやりがいや、モチベーションの源泉はなんですか?
「自分のやりたいこと・学びたいことができないのって変じゃない?」という思いからやっています。
なんで自分のやりたいこと・学びたいことができないんだろう?て、僕自身に対しても思うし、高校生に対して、ひいては年齢関係なくいろんな人に感じることがあって、それが源泉になっているんだと思います。
あと、単純に人の話を聞くのが好きだっていうのもありますね。その人の深い一面を知れるのが楽しいなと思ってます。
◆さっきの話にもありましたが、確かにプロジェクトを通じて、その子の内面の深い部分に触れられるというのはありますよね。
そうですね。マイプロでは、プロジェクトを考えるときに自分の問題意識や好きなことを大切にしているので。
でも、自分の感情から出発していざプロジェクトをやろうとすると、「これって自分だけしか感じてないんじゃないか」とか「自分だけの問題なんじゃないか」って不安が出てくると思うんですよね。それに対して「まずそれでいいし、もしかしたら他の人にとっても影響や意味があるかもしれないからまず調べてみようよ」という感じで、マイプロでは高校生に促しています。
そういう意味では、「まいらぼ。」(ゆるぷろが関西大学と共催している高大連携プログラム)は「ゆるぷろ」とはちょっと雰囲気が違うように感じました。
◆それは、どういったことから感じられましたか?
「まいらぼ。」は、大学の専門知(文献など)を活用して自分の興味関心を探究していくプログラムです。そこでは社会に対してどうアウトプットしていくのか?はあまり重要視していません。逆に、毎月1回開いている「ゆるぷろ」の方では、自分の感情を社会に対してどのように形にしていくのか?というのを重要視しているイメージです。
興味関心を掘り下げるという意味では「まいらぼ。」と「ゆるぷろ」は同じなのですが、ゴールイメージや目的が異なるなと感じました。
◆村瀬さん自身は、どちらが重要だとお考えですか?
どっちも重要だと思っています。例えば高大接続の文脈で、高校の中に大学の学びをもっと入れていくのであれば、大学と連携した「まいらぼ。」のような学びも必要なんじゃないでしょうか。逆に、マイプロは学校の活動の範疇に収まらないこともよく起きやすくて、だけどそういう所にしかない学びもある訳で、どちらも重要だと考えています。
◆色々な伴走の仕方があると思うのですが、基本的にどんなスタンスで高校生と関わるようにしていますか?
自分は、年上で威圧的な人は苦手。だから高校生とは、できるだけフェアな関係で接しています。フェアだから、お互い論理的に話すことを大切にするし、おかしいと思ったらおかしいというし、高校生からの反論も(当たり前ですけど)あります。
◆考えの押しつけをせず、対等な関係でいられるように。
こちらが意見を述べても、その子自身が納得できない、自分の感覚を信じたほうがいいと思うなら、絶対そっちを信じたほうがいいと私は思っていて、それは彼ら彼女らにちゃんと伝えるようにしてます。私には見えない世界が見えてるはず。だから、私が判断できるわけがないんです。
だから、逆に生徒から「決めてください」とか言われてしまうとびっくりします(笑)。
◆村瀬さんの方から、直接高校生のプロジェクトを手伝ったりすることはあるんですか?
特にはしていません。例えばプロジェクトに関わる情報を集めるのに人を探すにしても、私がアポを取ったりすることはありません。基本的に高校生には「自分でアポとりなよ」と言いますね。
逆に人を紹介しすぎると、そのあと自分1人でアポを取らないといけない時に動けなくなるんじゃないかな?と思って。
高校を出た後も大学で自走していくためには、高校生のうちに自分で色々できるようになっておく必要があるんじゃないかなと思います。実際、それで大学生になっても活動を続けている高校生はたくさんいます。
◆高校生が活動していく上で、制約になっている外的な要因は何かありますか?
とにかく高校生が多忙すぎて、時間がないことですね。テストとか部活とか、学校生活とマイプロの折り合いがつけられない子が多い。逆に、時間があればどれだけでもできるし、他に制約なんてないなって思います。実際に、大学生になって時間ができてからより活動的になってる子はたくさんいますし。
ただ、高校の時にマイプロに出会わなければ、結局大学でも授業とかバイトに追われるだけになってしまうことになりかねない。だから高校生にマイプロを提供することは大切だと考えています。
◆最後に、これからマイプロの伴走をはじめたい、より発展させていきたいと考えている方々へメッセージを!
世の中に、自分のやりたいことをやれてない人はいっぱいいると思います。だから高校生に限定するのではなくて、まず自分の身の回りの人のプロジェクトを支援してみたらいいんじゃないかなと思います。会社員であれば同じ社員を応援するとか、家族がいる人は家族とか、いろんなところにチャンスはあります。
自分の意志や感情を大切にできるようになるって、子どもとか大人とか関係なく大切なことだと思います。
(取材:2018年10月19日、文:和田 果樹)
※インタビューの内容は取材当時のものです。