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マイプロニュース

【事務局長blog③】審査基準にこめられた「マイ」の願い

2019.1.5

お知らせ

全国のみなさま、あけましておめでとうございます。
マイプロジェクト事務局長の今村亮です。

 

年末といえば、高校生スポーツがTVの主役となります。冬の高校サッカーや花園ラグビーなど、寒風に負けず高みを目指す高校生の姿を眺めていると、コタツでぬくまっている身にドキッとさせられます。

TVに映らなくたって高みを目指す高校生はいます。受験勉強、冬休みの宿題、そしてマイプロアワードでは、1/15にせまった締切に向けて続々とエントリーが寄せられる年末年始でした。冷たいキーボードに向き合ってエントリー文をまとめてくれた高校生のみなさん、おつかれさまでした。

さて。今回はマイプロジェクトアワードの審査基準が「主体性」「協働性」「探究性」に着地した背景についてご紹介したいと思います。
審査基準の経年変化をまとめると下図のようになります。多くの紆余曲折がありました。


審査基準をつくるプロセスは、アワードの教育ビジョンを言語化することそのものなので、一筋縄ではいきません。ご覧のとおり過去には、創造性・共感性・パッションなど今はない項目も示されてきた経緯があります。
実は2013年の第一回アワード開催時には、審査基準なんてものはありませんでした。たった18人のために開催された小さな全国大会には、資料や方針を準備する余裕もなかった・・・というのが実態ではありますが、今思えば大雑把なものでした。

実行委員会が提示した審査のキーワードは、「マイ」「アクション」。アイディアで終わらずアクションに踏み出したか、そのアクションを自分ごとと思えているか、という意味です。マイプロアワードはアイディアプランコンテストでも、マネーの虎でも、スピーチ大会でもありません。スピーチの巧さや、プロジェクトの事業性や、社会的インパクトを問う場ではない独特の趣旨は、果たして審査員と共有できるでしょうか。

そのとき審査員としてお集まりいただいたのは、各分野の第一人者たち。今では札幌新陽高校の校長でいらっしゃる荒井優さんや、マザーハウス副社長の山崎大祐さんなど。事務局の説明は拙いものでしたが、ほとんど言葉もいらないくらい簡単に伝わりました。

なぜなら、東日本大震災からの体験が共通言語となったからです。被災地では、課題を他人任せにしていても何も進みません。だから誰もが、自分にできることから動き始める必要があります。高校生が「マイ」と「アクション」の世界に飛び込むことを、すべての審査員が願っていました。

そして迎えた第一回アワードは、審査員が高校生と本気で向き合って、問いを投げかけながら、学びを引き出していく対話の場となりました。マイプロアワードの真髄は、プレゼンテーションよりも対話です。大人が高校生を審査していいのか、という葛藤もありましたが、本気の対話にこそ価値があることを、その熱量で確信しました。

そして2014年、全国大会としての拡がりに応えるため、第二回アワードから審査基準を公開することとしました。そのためには「マイ」と「アクション」という暗黙のコンセプトを、しっかりと明文化する必要がありました。

ひとまず自律性(当事者意識)、活動実績、必要性など6点の審査基準にまとめてみたものの、結果的に審査は紛糾しました。決勝審査に残った2つのプロジェクトを前に、審査員の意見は大きく割れることになりました。学校の先輩たちから引き継いだ壮大なテーマに立ち向かったプロジェクトと、ゼロから高校生だけで立ち上げたプロジェクト、一体どちらを称賛すべきなのでしょう?

その議論は決着せず、前者を代表する宮城県農業高校「SUN!SUN!そば」と、後者を代表する福岡県の「Fline」が、第二回アワード同率一位となりました。

特に私にとって印象的だったのは宮城県農業高校との出会いです。当時の私はプロジェクト型教育の先進事例を、欧米にばかり求めていましたが、実は日本の専門高校こそきわめて良質なプロジェクト型教育実践校だったのです。教育内容・人事・予算規模・施設、どの角度から見てもその水準は世界最先端なのだということに気づき、恥ずかしく思ったわけですが、それはまた別稿にて。
さて。2014年の同率首位審査を経て、2015年の第三回アワードから「学校部門」と「個人・グループ部門」の部門分けがはじまりました。学校で育まれたプロジェクトも、高校生個人が自発的にはじめたプロジェクトも、どちらもすばらしいという指針の表明です。

理由はほかにもありました。それは出場者の学校名公表の問題です。実はマイプロアワードには毎年一定人数、学校から反対されながらも隠れて出場する高校生がおり、学校名を明かさないでほしいと要望が寄せられていました。一方で、学校代表として出場するプロジェクトに、校名を隠させるのも奇妙です。部門分けはこの問題も解決しました。

そうして編纂された新しい審査方針をもとに、2015年から文部科学省の後援を受け、文部科学大臣表彰がはじまりました。ただし「マイ」と「アクション」を明文化する舞台裏の苦戦はいまだ続いていました。


特に難題だったのは「マイ」です。英語表記「オーナーシップ」は定着しつつあり、2016年の第四回アワードでは横文字を採用しましたが、それは日本語の対訳がどうしてもしっくりこないからでした。

いつしか関係者の中では「マイ感」という謎の通称が生まれ、これを公式化すればいいのではないかという諦め半分の意見さえありましたが、おいおいそれはちょっとやめておこうと踏みとどまりました。


(「マイ感」と言い出した関係者たち)

「当事者意識」はかなり良い線でしたが、ネガティブなニュアンスにも読めてしまうのが難点でした。いじめ当事者、被災当事者、事件当事者など・・・。高校生に悲劇ドラマを仕立てさせ、寄ってたかって消費しようとしているかのような気味の悪さを与えかねません。たしかに「マイ感」を問う上で原体験は重要ですが、等身大でいいのです。誰の人生にだってきっかけとなる小さな原体験はあり、その小さな輝きにスポットライトを当てるのがマイプロアワードなのです。

結局、ようやく「主体性」「協働性」「探究性」に収斂するまで4年が必要となります。きっかけとなったのは、副委員長の今村久美と、島根県海士町で高校魅力化の奇跡を起こした岩本悠さん、そしてリクルートキャリア元社長の水谷智之さんとの出会いでした。3人は日本全国津々浦々、そしてブータンまで、数多くの教育現場に足を運びながら幾度とない議論を重ねました。

(写真は岩本悠さんblog「悠学日記」より引用)

この出会いは大きな転換点でした。3人のイノベーターは、東北から始まったマイプロアワードという物語と、海士町から始まった高校魅力化という物語を重ねながら、まるで日本列島の両端を挟み込むように、角と角から新しい時代へのオセロ返しを始めることになります。これが2017年の第五回アワードからの共催団体である、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームの発足です。

お気づきのとおり、「主体性」「協働性」「探究性」という用語の選択には、「社会に開かれた教育課程」を目指す新しい学習指導要領の流れを意識した部分もあります。

今村久美は、文部科学省の中教審委員として学習指導要領改訂の議論に加わっています(参考:文部科学省公式サイト)。ついに国が動く、高校が変わる、学習者中心の時代が始まろうとしている。しかし学校教育現場はそう簡単には動きません。形式的な対応に終わる懸念もあります。だからこそマイプロアワードは学びの未来を先導する灯りであろう、合言葉のようにそう語りあいました。

そして2018年6月、ついに公表された学習指導要領の解説にはこのような図が記されています。


左側が既存科目「総合的な学習の時間」で、右側が新科目の方針です。
「自己の在り方生き方と課題と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していく」。なるほど、課題を教科書から与えられるだけではなく、自分自身と結びつける「マイ感」の重要性が、驚くほどしっかりと位置づけられています。

それが2022年からすべての高校の新たな科目として位置づけられる「総合的な探究の時間」です。こうした学びが必要となる背景に「社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている」と述べられています。平成が終わろうとする今、近代の始まりとともに始まった学校教育を、次なる役割へとシフトチェンジしようとする意志を感じます。

時代はどこまで動くのでしょう?学校はどこへ向かうのでしょう?何があろうとも、行政・学校・保護者・NPO、そして何より高校生自身が、バラバラになってしまわないよう、私たちは愚直にマイプロアワードで未来を照らし続けます。

高校生のみなさま、エントリー締切は1/15です。できれば書類落選なんか出したくないので、例年より多くの会場を用意してお待ちしています。

また観覧の申込も大会ごとに始まっています。時代の変化に肌身で触れたい学校関係者のみなさま、ぜひスケジュールをご確認くださいませ。

それではアワードの現場でお会いしましょう。2019年も全国高校生マイプロジェクトをよろしくお願いいたします!


2013年、筆者(左端)と第一回アワードの出場者たちとの集合写真

(文責:今村亮)
【事務局長blog過去記事】
①あなたの高校へ、あなたの町へ。マイプロジェクトアワード出張開催はじまります。
②高校生を主役に。マイプロアワードが選ばれる理由。
③審査基準にこめられた「マイ」の願い

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